前のめりに生きる。一歩踏み出せば決してコケはしない。

生きるって大変、でも、だからこそ素晴らしい!

第74歩 枯れないように優しさを

 

ママンがとっても機嫌がいい。
丹精込めて育てたかどうかは知らないが、紫陽花が爆発しそうなほどきれいに咲いたのだ。

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ご近所さんや通りかかる人たちが立ち止まり、「きれいやねぇ」と感嘆の声を漏らしながら去っていく。息子のことで褒められることなんて皆無なママンだから、紫陽花とはいえもちろんくそご機嫌だ。
野良猫もこの紫陽花が気に入ったのか、植木鉢にすりすりしながら花を見上げる。
僕は、そんなのほほんとした風景を眺めながらタバコを吸う。
 
つい先日、ママンとダディの結婚35周年記念日だった。
仕事帰りにダッシュでおいしい洋菓子店に駆けつけケーキを買ったダディは、
「35」にちなんでサンゴのかわいらしいプレゼントを用意していたようだった。
 
もちろんママンはといえばそんな記念日を覚えているわけもなく、
その日も僕とダディのことなんてほっといてご近所マダム会のため夜まで不在。
食卓には「おでん温めて食べて」という置手紙と共に、どんっとお鍋があるだけだ。
 
ダディ「記念日なんだがな・・・」
 
正座して、おでんを挟んで向かい合う僕とダディ。
ぽつりと言うダディがくそシュール過ぎて、僕はかける言葉が見つからない。w
 
しんと静かなリビングで、おでんがぐつぐつと煮えている。
 
僕はこんにゃくを箸でつまみ上げながら、一人ダチョウ倶楽部でもしてダディを笑わせるべきか、或いは勇気リンリンでダディにこんにゃくを投げつけてみるべきか悩んだ。
時を刻む針の音が、僕を一層焦らせる。
 
どちらもうまくいかない、きっと。w
 
僕はこっそりママンのケータイを鳴らす。
僕「もしもし?」
ママン「もしもし?どした?おでん食べた?」
僕「おでんどーのこーの言ってる場合じゃないぜママン」
ママン「なによ」
僕「今日、結婚記念日らしいぜ」
ママン「誰の」
僕「あんたのだw」
ママン「・・・」
僕「・・・」
 
ママン「きゃあああああああ」
 
ママン「すぐ帰るっ。お父さんどうしてる?」
僕「ちくわフーフーしてる(爆)」
ママン「(爆)おとといまでは覚えてたんやけどねぇ」
僕「う、うん、あと一歩だったね」
 
そんなことがあってちょっぴり落ち込んでいたママンだったが、紫陽花のおかげですっかり元気を取り戻したというわけだ。
 
「なんかうまく育てるコツあるの?」なんてご近所さんが聞くもんだから、
ママンは得意になって紫陽花について語る。
「ええ、みなさまと違って日陰に生きてますから。紫陽花は陰湿なところを好むでしょ?」と、自虐ネタをぶっこみたくてうずうずしている僕なのだけど、ここはママンを立ててやろうではないか。
 
そうやって様子を見ていた僕と野良猫を、ママンはしっと追い払い丁寧に水をやる。
やれやれといった具合に野良猫に視線を向けるが、猫にまでぷいっとされる。
 
んだよおいつれねーな
 
その昔、シーボルトは紫陽花の学名に自分の妻の名前をあてようとした。
まあ、これには諸説あってほんとかよって部分も多いのだけど。
もし本当にそうだったとしたら、それはそれで素敵な話じゃないか。
 
僕は、我が家に咲きほこったこの紫陽花に、ママンとダディの結婚記念日の日付をつけてやりたい。物忘れがひどなるであろうママンが、毎年、紫陽花の咲く頃にちゃんと思い出せるように。
 
そう思っていたのだけど、この紫陽花には父の日の日付も名前に加えなければならないと、僕は「紫陽花に水やり忘れないでね」とのママンの言いつけを忠実に守りながら思うのだった。
というのも、数日前から「DNA会」と称した親戚一同が集う会に、ママンと叔母のみーちゃんはルンルンで出掛けて行った。父の日なんか知るかってなもんで、なんでも尾道に旅行だとか。
DNA完全不一致のダディはもちろんのこと、50%引き継いでいる僕でさえお留守番。
 
ママン、紫陽花もいいけど、僕とダディが枯れちゃうぜ。w
 
ママン&ダディ、結婚記念日おめでとう。
35年前に結婚してくれてありがとう。
いいんだ、今までたくさん愛情を注いでもらったおかげで僕も大きくなったのだから。
ダディ、僕が復活したら男二人でいろんなところ行こうね。w