前のめりに生きる。一歩踏み出せば決してコケはしない。

生きるって大変、でも、だからこそ素晴らしい!

第71歩 ハラハランドリー

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彼は、最近わりと困っている。
 
毎度お世話になっている美容師の友人のことである。
「そりゃクズが高確率で居座る状況が続くと困るわな」とは言わないでほしい。w
そうじゃない。美容室の洗濯機が故障し、仕事で使うタオル類が洗えないことだ。
ので、近頃は週に一度か二度、歩いて10分ほどのところにあるコインランドリーに行くことが日課となっている。
 
僕にとっては歩いて10分なんてなんとも思わないのだけれど、
美容師の彼は20kgほど太り、とにかく体が重たいと歩くことを極端に嫌う。
太るだけじゃなく、なぜかアゴが2つに割れた。
「金〇マみたいだね」と言うととても傷ついた風だったので、
最近は「ユアン=マクレガーみたいだね」と言ってやることにしている。
 
とにかく、普段wifi泥棒させてもらってるから少しくらい役に立とうと、コインランドリーまでのタオル運搬は僕が買って出た。なんだかんだ、今日は美容師の友人もついてくる。ちなみに、このタオルはお客さんに使う用のタオルではないのだそうな。
 
300円で洗濯→ある程度の乾燥まで自動でやってくれるマシーンが一台だけある。
ほかのマシーンは、やたら高いし洗濯と乾燥が分かれていて面倒が増える。
領収書が出ないため経費にならないこのコインランドリーチャレンジ、友人のためにも安くしてやらなきゃいけない。
なにより洗濯している間、近くの喫茶店で茶をしばくことが日課となっていて、友人の話にテキトーに相槌を打ちながらカフェオレを飲んで読書するまったり時間を楽しみたい僕にとっては、最後まで全自動でやってくれるマシーン一択だ。
この優秀で手間のかからない、まるで僕と正反対のマシーンのふたを開ける。
 
前のお客さんの洗濯物残ってやがる。
 
それも、まあ時間が経っている様子だ。
洗濯して数時間放置したときの、あの何とも言えないカビ臭い嫌な臭気が、つんと僕の鼻に触れたのだ。気持ち悪いので即ふたを閉める。
 
友人「もう終わってるよね、これ」
僕「終わってるも何も、こんだけ放置臭してたら俺ならもう1ラウンドいっとくぜ」
友人「取っていいかな?」
僕「えっ、やだよ他人の洗濯物触るとか気持ち悪い」
もう一度恐る恐るふたを開けて様子を伺う。
 
ブッ、ブラジャーやないかっ
 
僕「に、兄さんっ。これ、見たらあかんやつや」
友人「う、うん。でもなんか・・・」
僕「分かる。言いたいこと分かるよ。なんか・・・」
 
僕&友人「お母ちゃんのやつみたいやっ」
 
ww
なんだかとってもかわいくないタイプなのだ。
とりあえず慌ててふたを閉める。
30歳にもなって二人してこの慌てふためき様。
 
僕「いやでもさ、分かんないよ?」
友人「何が?」
僕「俺の昔の彼女、『胸が大きいとかわいい下着があまりないの』って、地味な下着ばっかりだったもん」
友人「大きいって?」
僕「Gカップだったかな」
友人「(ゴクリ)・・・」
僕「・・・」
二人してゆっくりと、物言わぬマシーンに振り返る。

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いやそういうことじゃねーだろ。ww
絶対違うぞ。洗濯物の持ち主がどんな人かは関係ないはずだ。何を想像してんだw
そうじゃない。おばあちゃんだかイケイケ爆乳ねーちゃんだかは関係ない。
とりあえず洗濯物を他人に勝手に出されてはいい気分もしないだろうと、数十分待つ。
僕はいつでもタブレットPCを持ち運んでいるので、いつでもどこでも文字を打てる。暇つぶしという時間が僕にはほとんどない。
 
待ち人来ず。
 
さすがにもう1回回せるほどの時間が経って取りに来ないのはあんまりじゃないかと。
と、隅の壁に《次のお客様のために洗濯物を取り出させて頂きましたby店主》とのカードを見つける。なるほど、店員は絶対的な権力を持っているらしい。
 
隣にクリーニング屋さんがあるので、これは間違いなくクリーニング屋のオヤジの怠慢の結果でできたコインランドリーだろと、お店で聞いてみる。
 
僕「すみません、隣のコインランドリーって同じ系列ですか?」
店員「あ、えっと、半分くらいはそんな感じです。たぶん。はは」
僕「は?」
 
 
なにが面白いのか分からず、僕はおもっくそ真顔になってしまう。
 
僕「いや、前に使用した人の洗濯物、取り出して頂くことってできますか?」
店員「いや、それは私の立場ではできません。お客様のご判断にお任せします」
僕「え、僕の判断で?」
店員「もしトラブルになったときのことを考えますと」
僕「トラブルになりそうなことはお客様同士でブヒブヒやってくれってことですか?」
店員「言い方w。まあ、そういう感じです」
僕「そうですか。でも、《洗濯物取り出しました》ってカードありましたよ?」
店員「あ、あのカード使ってもらっていいですよ。洗濯物取り出して、あのカード置いてたら大丈夫だと思う。私は知りませんが。はは」
 
50代くらいの店員男性のよく分からん愛想笑いのなか、僕は余計なことを言う前に立ち去った。あと2秒でもあの場にいたら、お客様同士どころか僕とトラブりそうだ。
《by店主》と書かれたカードを、なんかあったら嫌だから店員使えないけどお客は使っていいよルールなんてあるわけないと僕は思うのだけど。
無理ならべつのマシーン使えこのクズがと言ってくれたらそれでいいのに。
いずれにせよ、そのカード置いたら店員が取ったことになるんだから。
いや、まあどーでもいいのだけど。しょーもな。
 
結局、ブラジャーに臆した意気地なしの僕たちは、倍の値段がするマシーンを使用し、まったりカフェオレタイムを中断し、ひと手間増やして洗濯したのだった。
僕たちの洗濯が終わった1時間後、まだその洗濯物は取りに来た気配はなかった。
 
僕はゲストハウスに1カ月滞在した際に多用し、コインランドリーマスターになった。
ケータイで洗濯完了時間にタイマーをセットし、即回収する。
べつに洗濯物見られるのが嫌なわけじゃない。
次の人の迷惑にならないようにと思うからだ。
 
ゆえに思う。
なぜ何時間も自分の洗濯物を放置できるのかと。
誰かに見られたら嫌だなと思うより先に、次の人に迷惑かけちゃ悪いなと、早く回収する気が起こるのは当たり前なんじゃないか?
こちとらおめーみたいにヒマじゃねーんだというくらい忙しい人もいるかもしれない。
だからといって、他人の時間と金を奪っていい道理などない。
こちとらおめーが忙しいのなんて知ったこっちゃないのだから。
 
誰かに迷惑をかけるかもしれないうえに、誰かに見られたり取り出されたり、或いは盗まれるかもしれない状況にも関わらず、洗濯物を放置する心境をぜひ聞いてみたい。
それがかわいい下着を着けれない悩める巨乳ちゃんなのか、はたまたかわいい下着に興味のないおばあさんなのか、それは分からない。
分からないのだけど、スリルとサスペンスに欠けるド田舎のコインランドリーにて、
妙にハラハラさせてくれてありがとうと、一言お礼は言わせてもらいたい。
 
久しぶりに手に汗握った、そこはハラハランドリー。