前のめりに生きる。一歩踏み出せば決してコケはしない。

生きるって大変、でも、だからこそ素晴らしい!

第70歩 どこかにはいるはず

 
 
「あいつのお墓参り行こうぜ」
ゴールデンウイーク、高校時代の友人から連絡が来る。
ニューヨークからぶっ飛んで帰って来たのだ。
 
彼は、高校で知り合ったなかで最も仲の良い親友の一人だ。
僕には到底及ばないのだけど、彼も体育教師ボコられランキング3位あたりに堂々ランクインしていた。
二人して体育教師の逆鱗に触れ、冗談のような地獄か、地獄のような冗談かよく分からなくなるほどに体育倉庫でボコられた挙句、放課後まで体育倉庫に監禁されたことがあった。
 
僕「これさ、助け呼んだほがよくない?」
友人「いや、これたぶん試されてんだよ俺ら」
僕「というと?」
友人「忍耐力」
僕「マジかよおっかねえな」
友人「ケータイで友達にSOSでも打ってみろ。どうなる?」
僕「『なんで学校にケータイ持って来てんだコラ』ってまたしばかれるのがオチだな」
友人「だろ。とにかく耐えるんだ」
僕「まいったねえ」
 
結局、体育教師は僕たちを閉じ込めたことを忘れていただけで、なんで助けを呼ばなかったんだ授業サボりたかったんだなと逆にまた怒られたのだった。そんなおバカな高校生だった僕たちも、いつの間にか30歳になった。相変わらず僕はおバカなままなのだけれど、彼は立派にくそ大手企業エリートになりやがって、くそかわいい嫁をもらい、くそかわいい子供を授かった。
 
僕「おかえり」
友人「帰りの飛行機、どこかの大学の相撲部ご一行と便が一緒でさ」
僕「まいったねそれ」
友人「機内の気温5度は上がってた。でかいのなんのって」
僕「墜落しなくてよかったね。どすこい」
友人「どすこい。そういえば朝青龍元気?」
僕「いや、知らない」
 
朝青龍とは、もちろん本物のことじゃない。
僕の大学時代の彼女のことだ。w
ぽっちゃり気味のかわいらしい女の子だったのだけど、
僕は真面目に恋をしていたのだけど、友人たちは揃いも揃って朝青龍と呼ぶ。
あんまりだ。
 
昨年の9月に亡くなった高校時代の友人のお墓に行こう。
 
そうして、早速車に乗り込みエンジンをかける。
友人「で、お墓どこ?」
僕「え、これから探すんだけど」
友人「・・・」
僕「・・・」
 
僕たちは、とにかく亡くなった友人の地元に向けて車を走らせる。
彼の実家は僕たちの地元と離れていて、高校時代は毎日1時間以上かけて列車と車を使って登校していた。
 
コンビニで聞込み、市役所に問い合わせ、お寺に聞いてみて、友人に連絡を取り、なんやかんやとした結果、ご実家に連絡するしかねーなと、結局はそうなる。
父ちゃん母ちゃんに気を遣わせるのもどうかねということでなるべく自分たちでお墓を探したかったのだけど、仕方ない。
 
手ぶらで行くわけにもいかねーぜと、道行くマダムにここら辺りにしゃれおつなお菓子屋さんないかと問うたところ、洋菓子屋が一軒だけあるとのことで、焼菓子詰合わせをば。
 
友人「あ、線香忘れた」
僕「お前何しに来たんだよ」
友人「お墓参り」
僕「線香当たり前にいるだろ」
友人「お前、持って来てんの?」
僕「忘れた、ごめん」
 
ご実家で仏壇に手を合わせる段で、異変に気づく。
ニューヨーク帰りの彼は、線香の火をふっと息を吐いて消した。
当然、線香は息で消すものじゃない。
そして、手を合わせおもむろに2回手を叩いた。
なんだそれ。w
 
まあ細かいことはよしとしよう。
友達に手を合わすのもどうかと思ってたとこだ、そんくらい大目にみてくれるだろう。
 
そうして次に、親父さんに案内してもらいお墓へ。
「なかなか気力が沸かなくてね」
力なくそう言いながら、お墓掃除をしばらくしていないことを詫びる親父さん。
小一時間、いろんな話をしながら、僕たちは3人でお墓を綺麗にする。
高校時代の思い出話や、沖縄旅行の笑った話、僕たちの知らない友人の話。
親父さんは、そうかそうかと、嬉しそうに聞いてくれる。
 
「こいつと友達でいてくれてありがとう」
 
噛みしめるように言う親父さん。
僕たちこそ、最高の友達をありがとう。
 
僕たちは線香が消えるまでここにいますと親父さんに伝え、お墓に残る。
僕も友人もタバコに火をつける。
亡くなった友人は、酒を呑んだときだけタバコを吸うタイプだ。
 
「また、アホほど酒呑みたかったな」
 
うんとだけ答えて、お墓を見つめる。
お墓は、ただの角ばったでかい石だ。
笑ってもくれないし、相槌もうたない。
 
いつだって心のなかに。