前のめりに生きる。一歩踏み出せば決してコケはしない。

生きるって大変、でも、だからこそ素晴らしい!

第68歩 おばあちゃんの牡丹

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僕には、一人だけおばあちゃんがいる。
普段は遠く離れた別の場所で暮らしているのだけど、地元のお祭りの時期の10日間だけ帰ってくるのだ。
御歳87歳で、頭しっかり足腰しっかりお肌つやつや、エネルギッシュ過ぎるパワフルばあちゃんだ。
畑いじりに取り掛かった姿は、まさにスターを使ってなおかつBダッシュを決めてるかのようなスパークぶりで、あと100年は生きれそうなほどだ。
 
そんなおばあちゃんと並んで庭を散歩すると、いろんなことを教えてくれる。
知らない草木の名前や、意外な効能、なぜこの庭に植えたのかという思い出話。
 
「なんでもそうよ。少しずつあればそれでいい。たくさんはいらん」
 
庭に少しずつ点在する、いろんな種類の草花を教えてくれながら、
おばあちゃんは人生をも説く。
 
おばあちゃんに無駄は一切ない。
雑草を抜いたら、雨が降るまで畑の脇に並べる。
そうしておくと、雑草の根についている土は雨に流され、再び畑に戻るのだそうな。
土のおかげできれいな花も作物も育つのだから、土だって大事にしてあげなあかんと、おばあちゃんは言う。
そうしてすっかり雨に洗濯された雑草、このなかにも無駄はない。
油で揚げるとおいしい根っこを持つ雑草があるとのこと。
 
可憐な花を咲かすことのない、ただ生える草は雑草か。
群生し、忌み嫌われ、抜かれるだけの存在はすべて雑草か。
雑草とは、どうやら人が個々勝手に決めてそう呼んでいるだけらしい。
おばあちゃんにとっての雑草は、極端に少ない。
いろんなものに意味を与えてやれるおばあちゃんの「もったいない」感覚。
貧乏性だなんて、陳腐な言葉で表せようか。
いいや、清貧と称える。
 
そんな具合に僕は、毎日の午前中は農家の友人のお手伝いも、図書館も、美容師の友人のところにも行かず、おばあちゃんと畑や縁側で過ごすことにしている。
仕事を辞めて帰って来なければ、おばあちゃんとのこの時間は永遠になかった。
「なぁんも手伝ってもらうことないで」
と、毎朝なにか手伝うことはないかとお伺いを立てる僕に、ばあちゃんは決まってこう応える。
そう言いながら、「植木鉢の草抜いてやらないけんな」「池の落ち葉きれいにせんといけんな」「木も余分な枝切ってやらないかんな」と、ぶつぶつ言う。
その姿がくっそかわいくて、僕はなんだかうれしい気持ちになりながら、おばあちゃんミッションのうち大変そうなものだけ選んでやる。
全部やっちゃうとおばあちゃんの分がなくなってしまうからだ。
僕は僕で一生懸命お手伝いするのだけど、失敗もある。
 
祖母「あんた、今抜いたの雑草ちゃう。ミントや」
僕「ごめん、ばあちゃん。いい香りだね」
祖母「やかましい」
僕「ww」

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今取り掛かっているのは、庭の池を覆う松の木の剪定だ。
なんでも、松は枝が見えるほどに葉が短い方がかっこよいらしく、
年に2回は葉を切ってやるのだとか。
おばあちゃんのお手本に習って僕もやり始めたのだけど、どうにも上手くいかない。
 
祖母「ぼつぼつやんなはいよ」
僕「ぼちぼちやってたら1年かかってまうわ」
祖母「ほな毎日切ったらええ」
僕「いやです」
 
そうしてひと段落すると、おばあちゃんが淹れてくれたコーヒーを縁側で飲みながら、
一緒に手入れした畑を眺める。
僕が過ごしてきた時間の様々な出来事を話し、一緒に笑って、一緒に想う。
刺々しく、どこか歪な僕の過ごした時間が、おばあちゃんの柔らかい時間に溶け込んでいく。
 
砂糖も牛乳も入っていないのに、おばあちゃんのコーヒーは甘い。
 
そんなおばあちゃんは、料理も抜群にうまい。
味付けが上手なのか、とにかくおいしい。
のだけど、たまにミラクルな料理を繰り出す。
ここ数日、ヨモギがこれでもかというほど入ったホットケーキが気に入っている。
ここだけで正直に言う。
 
くっそ不味い
 
ww。
いや、好き嫌いのレベルではない。
本当においしくない。
世のヨモギホットケーキはおいしいのだろうけど、おばあちゃん作のものはしんどい。
僕はそれでもせっかく作ってくれるから懸命に食べる。
おばあちゃんは、その姿がうれしく2枚3枚と焼きまくる。
 
もうおなかいっぱいだと、僕は逃走する。
 
と、80歳になるおばあちゃんの弟が遊びにやってくる。
おばあちゃんの家系はくそ長生きで元気な家系らしい。
おばあちゃんは8人兄弟の長女だとか。
僕は3人までは会ったことがあるのだけど、コンプリートは不可能だと思う。
 
僕「ねえばあちゃん。4番目の兄弟ってどんな人?」
祖母「4番目・・・」
僕「じゃ名前は?」
祖母「誰やったかな・・・」
 
こんな具合だからである。
とにかく、祖母の何番目だかの兄弟が訪れた。
 
祖母「ええとこ来た。ホットケーキ持って帰りや」
弟「おめーのは不味いから要らね」

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w言っちゃったwww
くっそシュールなヨモギホットケーキの終幕に、遠目で様子を見ていた僕は必死に笑いを堪える。
どうやら、昔からホットケーキを焼くのが苦手らしい。
何はともあれ、おばあちゃんとの時間を過ごせて満足なのだ。
 
 
楽しみにしていた牡丹の花が咲いたと、おばあちゃんは大喜びだ。
1年も心待ちにして、咲いているのはたった3日ほどなそうな。
 
「綺麗に咲いてくれてありがとう」
 
世界に真っ赤な染みを残して散る牡丹。
おばあちゃんは、何度も何度もありがとうと語りかける。
 
おばあちゃんこそ、ありがとう。
 

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