前のめりに生きる。一歩踏み出せば決してコケはしない。

生きるって大変、でも、だからこそ素晴らしい!

第66歩 まさか自分がハローするなんて考えたこともなかった

 
 
リクナビネクストやエージェントを活用した就職活動もいいのだけど、くそ田舎の求人はやはり地域のハローワークの方がカバーしているだろうと思い、ハローしてみる。
 
なかなか便利なもので、備え付けPCで年齢や希望月収、希望職種などを指定して検索できるようになっており、へぇとなんだか感心する。
 
年齢30で、実家から通勤できるとこで、月収は田舎だからそんな贅沢もいえないしとりあえず30万にしておこう、職種はできれば今までの感じで・・・振り子がいっぱいいっぱい振り切れた資本主義なんだからこの先どうなるか分かったもんじゃないしべつに正社員かどうかはどーでもいいなどなど、条件を指定してぽちっと。
 
 
検索結果0件
 
 
えっ。w
バカかおめーはこのクズがと、PC画面から聞こえてきそうなノリだ。
まいったねと、窓口のマダムのところに韋駄天走り。
 
僕「できれば市内、もしくは通勤可能なとこでこんな感じの仕事探してるんですけど」
マダム「ちょっと調べてみますね」
僕「・・・」
マダム「・・・」
マダム「うん、ないです」
僕「じゃ、給料とかどーでもいいから、この近くでこんな業種の求人ってあります?」
マダム「似たような業種で1件あるといえばありますが」
 
と、ぺらっと求人票をプリントアウトしてもらう。
 
月収15万
 
う、うーん。
額面15万ってことだよね。
それ、手取り10万くらいってことか。
「ここらへんではこれが平均ですよ」とマダム。
いや、べつに僕は自分の執筆活動をする時間が取れて、1日1箱のタバコと1週間に1冊の本を買うお金さえあればそれでいいのだし、あとはママンにご飯代で渡せればそれでいいのだけど。
 
すけべなお店は・・・我慢できるからいいや・・・。
でも・・・借金・・・最速で返したいもんな・・・。
あと、たまには呑みに行きたい・・・かなぁ・・・。
 
マダム「でもここ、女性しかたぶん受け付けないと思いますよ」
僕「え、なんでですか?」
マダム「去年から求人出てて、男性10人くらい応募したけどみんなだめだったの。職場に女性が少ないから」
僕「じゃスカート履きますよ僕」
マダム「う、うんw」
僕「エロ上司にやらしい目でみられても我慢します」
マダム「ww」
僕「お菓子作って職場持ってく」
マダム「wwww」
僕「クッキー。おいしいやつ」
マダム「爆wwwww」
 
と、受付でそんな具合にきゃっきゃやっていると、たまたま所長さんがやってくる。
いや、マダムが「所長」と呼んでいたからそうだと思っただけで、
もしかしたら「ショチョウさん」という苗字の人かもだし、
もしかしたらマダムの夜の所長さんなだけなのかもしれないからほんとのとこは知らないのだけど、とにかく所長さんが出てきて、おもむろに僕の職務経歴書を眺める。
 
所長「え、君めっちゃ面白いやん」
 
そうだろそうだろと、会話が弾む。
よし、私が電話してあげると、所長が自ら企業に電話してくれることに。
経験と年齢に応じて給料は考慮してくれるかもと。
なんやかんやと僕の目の前で話してくれ、それでもやはり企業は女性を求めているとのこと、求人の業務以外でも、専門知識をもったいい人物だから一度会うだけ会ってくれないかと、そこまで所長さんは食い下がって奮闘してくれたものの、そんながっちがちな経験を持った人間は逆にやりづらいからいらないと言われてしまった。
 
たった今少ししゃべっただけなのに、よくもそこまでこんなクズのことを持ち上げてしゃべれるもんだと、僕は心のなかでさすがショチョーだ、受付のマダムが旦那子供を顧みず熱をあげるだけのことはあると、僕も一度だけなら抱かれてもいいと思わずにはいられなかったほど心底感心した。
言っちゃ悪いがハローワークってテキトーな仕事やってんだろととても失礼なイメージだったのだけど、どうも親身にやってくれる人もいるらしい。
 
それだけお話してくれた受付のマダムもショチョーさんも、まさか僕が根も葉もない不倫ネタを妄想して楽しんでるだなんて思うまい。
 
そんなこんなで、実家から通える仕事を選ぶとしたら僕の選択肢は限られるようだ。
いうほど興味ない職種で少ない給料のところか、まあ経験と能力を活かせる職業で少ない給料のところか。
いずれにせよ収入的には厳しいなと思いながら家路につく。
 
源平合戦で逃げのびた平氏残党の隠し財宝を探しに山を探検しに行かないかと友人たちにlineを送るものの、全員に既読無視されて泣いちゃいそうな夕暮れ時、庭でたそがれてタバコを吸っていると、30歳にしていい感じに禿げ上がった農家の同級生が、山仕事を終えて僕の家の前を歩いて行くところだった。
 
僕「おつかれ」
友人「おう」
 
と、彼の広いおでこに痛々しいキズがある。
 
僕「嫁にフライパンでしばかれたらしいな」
友人「なんでだよw山で木にぶつけたの」
僕「今度嫁に会ったらせめておたまで勘弁してやれって俺からもお願いしてやる」
友人「w」
僕「おつかれ」
友人「うん、またな」
 
ロンT1枚で心地よいぽかぽかな一日。
「〇恵夫人は100万円渡したかどうか、あんたはどう思う?」と、近所のおばあちゃん2人が立ち話をはじめてかれこれ30分。おばあちゃんたちの厳しい追及は政治家へとさらに続く。
開け放たれた窓からふわりと運ばれる優しい春風に乗って、
「悪いことするやつみんな地獄に落ちてしまえばええ」とくっそバイオレンスな結論が聞こえてきた、赤く赤く染まる、平和すぎる田舎の黄昏時。
 
それは、鳴り止まない雨音のなか思い出す昨日のことだ。