前のめりに生きる。一歩踏み出せば決してコケはしない。

生きるって大変、でも、だからこそ素晴らしい!

第62歩 【田舎に暮らす50代女性がガラケーからスマホに替える大変さについて】

                                   

ええ、僕の叔母の話です。
ご存知の通り、僕の叔母は身内が言うのもなんだが、とても50代にはみえない若さだ。
60代の僕のママンと歩いていると「あら、娘さん?」と言われる。
最近衝撃だったのは、僕とデパートを一緒に歩いていてマッサージチェアの体験ブースを通りかかった際、「旦那さまもいかがですか?」と言われたことだ。
もちろん、本人はくそ嬉しそうに微笑む。
 
そんな叔母は、田舎を出たことがない。
生まれ、就学、就職、すべてそのまま田舎に暮らしている。
さぞ大変だったであろう痴呆が早かった祖母の介護を、叔母は働きながら貫いた。
「施設には入れたくない。忘れられてもあたしの母ちゃんだもの」
 
生粋の田舎っ娘である叔母は、つい数か月前、意を決して大阪に一人旅することに成功し、本人はとても得意気である。
梅田駅で迷子になり、勇気を出して尋ねた通行人が中国人だったというボケをかまし、さらに中国人は日本語がカタコトでしゃべれて、道を完璧に理解していて丁寧に教えてもらうという、中国人に日本の歩き方を教わるオチまでつけて締めくくってくれた。
100点満点だ。
 
つい最近に誕生日を迎えた叔母は、
職場から帰る際、近所の魚屋のおじさんから"おから"を、さらに近所のおばあちゃんにお饅頭をもらって帰ってきて、叔母は、それらを見つめながら自嘲気味に笑った。
 
 
『魚屋のおやじ・・・おからって』
 
 
その悲壮感漂う姿を見ながら僕は、知らんぷりして「くっ・・・」と必死で笑いを堪えるが、叔母は僕の8万倍ユーモアセンスがあるので敵わない。
 
 
『せめて魚やろ、そこは』
 
 
そうして突然、無言でPPAPを踊り始めるのである。
そこで僕は堪えきれず爆笑する。
 
そんな地域の愛情をたっぷりに育った叔母のみーちゃん(仮)が、今日、僕に相談にきた。
みーちゃん「ねえ、なーくん。スマホに替えたい」
僕「う、うん。替えたら?」
みーちゃん「職場の若い子らにそんなボロボロのケータイってバカにされた」
僕「ケータイくらいでガタつくなよ田舎もんがって言ってやればいいよ」
みーちゃん「それ、あたしに言ってる?」
僕「・・・。ごめんみーちゃん。みーちゃんにはそんなこと思ってないよ」
みーちゃん「・・・」
僕「・・・」
 
いつも通り、世の皆様が忙しく働く平日の午後、こんなくだらない会話で見つめ合う人たちがこの世にいる。
 
みーちゃん「友達が今なら47円でスマホに替えれるって言ってたんだけど」
僕「え、そんなのあるの?それ本当だとしても、結局は手数料や充電器や頭金うんぬんとかで結構お金かかるぜ?」
みーちゃん「いいの。スマホに替えたい」
 
僕「・・・」
みーちゃん「・・・」
 
僕「一緒に行こうか?」
みーちゃん「え、いいの!?マジ?」
 
スマホなんて1ミリも分かんねーからついてきてほしいと初めから言えばいいのに。
 
みーちゃん「帰りはスーパーで好きなもん買ってあげるからね」
僕「きょうび小学2年生でも食いつかないよ」
 
と、二人してケータイショップへ。
なんやかんやと店員のお姉さんと僕がやりとりをするなか、みーちゃんはただ黙って真剣に聞いている。分からないことには基本口出ししないし、恥ずかしがりタイプだ。
スペックや機能は一切どーでもいい。
とにかく使いやすくて安ければ。
 
僕「一番安い機種で、一番使い易くて、一番お得になる割引プランを合わせたものを教えてください。あと、同時加入で初期費用安くなるサービスとか、結局外し忘れてお金かかっちゃうこと多いしそういうのも一切要らない」
店員「畏まりました」
僕「ねえみーちゃん、そんなに通話もメールも使わないもんね?」
みーちゃん「……たくさん使うもん」
僕「う、うん。別にバカにしてるわけじゃないよ」
 
そんなこんなで、店員さんに最初に勧められたのはドコモの「MONO(モノ)」という機種だ。

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みーちゃん「これ、MADE INよそ?」
 

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僕「ww」
店員「中国製ですね」
みーちゃん「あー、中国かー。まあいい人ではあったけどなー」
 
きっと、大阪で道を教えてくれた人のことを思い出しているのだろう。
店員さんは少し困っている。
 
僕「いいじゃん"モノ"ってやつ。シンプルで使いやすそうだよ」
みーちゃん「んー…。悩む。モノがモノなだけに」
僕「いいんだよみーちゃんうまいこと言わなくても」
 
と、次に教えてくれたのがこれ。

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みーちゃん「あ、こっちの方が好き」
僕「使い方とか、どれ買っても覚えなきゃいけないんだしどれでも一緒だよ」
みーちゃん「うん、なんかこれ持ってたらウキウキできそう」
僕「そっか。気に入るものあってよかったね」
店員「これ、防水機能もついてるんでお風呂でも使えますよ」
 
みーちゃん「え、お風呂で、使う?」
 
僕「そういうことじゃないと思うよみーちゃん。音楽聴いたり、動画観たりできるってことね。スマホでゴシゴシするわけじゃないからね」
みーちゃん「・・・」
僕「・・・」
店員「・・・」
 
みーちゃん「分かってるよ」
 
 
嘘つけ
 
 
僕「さっきの"モノ"と機能はどれくらい違いあるんですか?」
店員「大きなところでは、モノにはお財布機能とワンセグ機能がないとこですね」
みーちゃん「え、マジ?ワンセグってやっぱいるよね?いや困るよねワンセグないと」
僕「ワンセグ知らないでしょ?」
みーちゃん「・・・」
僕「・・・」
店員「・・・」
 
みーちゃん「うん、ごめん」
 
そんな具合で、きゃっきゃ言いながら決める。
結局2台目に見たものに決め、とはいえ在庫切れなのでまた後日契約ということに。
本人は「ついにあたしもスマホか」と、とっても嬉しそうである。
と、二人でスーパーをうろうろしていると、僕のママンからみーちゃんに電話が入る。
なんでも、街の方にいるんだったら、ついでにきれいでおいしそうなゴボウを買って来てほしいと頼まれたそうだ。
 
みーちゃん「ゴボウ買って来いだって、お宅のばあやが」
僕「すまんね、みーちゃん」
みーちゃん「スマホ選びに来たのに。ゴボウ選べだなんてあんまりじゃない」
僕「wwそんなに落ち込まなくても」
 
ぶつぶつ言いながらゴボウを選び、僕には缶ビールを買ってくれる。
そうして帰ってママンにゴボウを献上したところ、「これじゃない。新ゴボウって種類の短いきれいなやつ欲しかったのに」と、みーちゃんは怒られる。
 
僕「・・・」
みーちゃん「・・・」
 
この無言で見つめ合う瞬間がたまらなく面白いのだけど、この空気感は文章ではなかなかうまく表せないのでとても悔しい。
いくつになっても、「なあ、姉ちゃん姉ちゃん」と僕のママンに話しかける姉妹の会話が微笑ましく、僕はとっても好きだ。
 
僕がまた、田舎を離れて暮らすようになったときは、叔母を田舎から誘い出していろんなところに連れ出してみたいなと思う。テキトーな若い女の子とデートするより8万倍楽しいはずだ。