前のめりに生きる。一歩踏み出せば決してコケはしない。

生きるって大変、でも、だからこそ素晴らしい!

第20歩 200円と健太くんとSL機関車

 

 良く遊んだ公園に、長年の役目を終えてひっそりと眠るSL機関車があった。

僕たち仲良し3人組は、背負っているのか背負われているのか分からなくなるほどに、小さな体に不釣合いなピッカピカのランドセルと共に、学校帰りにSL機関車へと駆けて行き毎日遊んだ。小学校1年生のときだった。

 2組のアイドルの好きな男が誰だとか、担任の先生のサインがめちゃくちゃかっこいいからマネして書いてみようとか、秘密基地を作る材料調達のことだとか、近所の犬が最近あまり吠えなくなって病気なんじゃないかという心配だとか、たくさんの、本当にたくさんのことを、僕たちはSLの車内で大いに語った。子供にとっては贅沢すぎる「機関車ごっこ」をしながら、真っ暗になるか気が済むまで、そうして過ごした。

 ある冬の寒い日、真っ暗になっても、どうにも気が済みそうにない日があった。誰一人、「そろそろ帰ろうや」なんて言い出さなかった。健太くんは、ひとつ白い息を吐いてから、ぽつりと言った。

 

「SL、動かんかな」

 

今まで幾度となく口にし、誰ともなく「動くわけないやろ」とツッコミをいれていた彼の言葉に対し、この日ばかりは「そうやな、動かんかな」と口を揃えた。

 

できれば、できることなら、このままどこか遠くに連れて行ってくれないだろうか――

 

僕たちは、できるだけ元気よく、いつもより張り切って出発の準備を始めた。動かない電気系統スイッチに手を伸ばし、びくともしない油圧ペダルを踏み込み、石炭代わりの小石を懸命にスコップで炉に掻き込んだ。

 

 汽笛を鳴らす紐を力強く引っ張りながら、健太くんは泣いた。

 

白い息を吐きながら、大声で泣いた。いつもの「しゅっぱーつ!」というご機嫌な号令は、最後の最後、かからなかった。

 

 その日、動くはずのない、大きく真っ黒な体をした鉄の塊は、数センチ、ほんのちょっぴりだけ僕らを乗せて未来に向かって動いたのだった。彼が遠くの町に引っ越しをして、もう20年以上経つ。僕たちは、小学校1年生だった――

 

 

 

健太くん、元気にしてますか?

今、どこで暮らしていますか?

僕たち、いつの間にか大人になったね。 

 

 

学校の裏門を出て坂を上ったところにある駄菓子屋で貸した200円覚えてますか?

 

 

 

そろそろ返してくれませんか?

 

 

 

うわぁぁぁぁぁっぁん 健太くーーーーーーーん

200円+利子8億で。

 

 

 

 

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