前のめりに生きる。一歩踏み出せば決してコケはしない。

生きるって大変、でも、だからこそ素晴らしい!

第79歩 モンテーニュですら考えを改めたわけだし

 

さかのぼること約160万年前、人類は体毛をもつことを放棄した。
ホモ・ルドルフエンシスやホモ・エレクトゥスと呼ばれる、もろホモっぽい名前の彼らが体を張ってブタ共を狩りまくっていた頃、「俺たちめちゃ動くし体毛あっちーから要らね」と超進化を遂げたのだ。
彼らはモンハンを楽しむだけでなく、キャンプファイヤーなんぞの催しも楽しんでいたはずで、体毛がなくなり露わになった裸体を艶っぽく炎が照らし、一方で大事な部分にだけは毛が残り、それがまた恥じらいの念を強め、そのおかげで男女がロマンチックかつエロティックに語らう夜が生まれ、洞窟を飛び出して広い新世界を目指したはずの野郎共は今度は違う穴に魅了され、爆発的に人口が増えた。どすけべホモ野郎。
 

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にも関わらず、だ。
自ら体毛を持つことを放棄したくせに、ウサギさんやトラさん、
獣という獣の、毛という毛を刈りまくって着ちゃってる人類。
 
鬼畜。
 
毛だけでは満足できず、皮まで剥ぎ取る鬼の所業。
畜生。
決して合成皮の安っぽいローファでぺたぺた地べたを這いずり、
ほんの数%カシミアが入ってるくらいで暖かいと勘違いできる便利で安上がりな僕が、
ふわふわもこもこの暖かそうな毛皮を着たもののけ姫に出てきそうな金持ちマダムをみて僻んでいるわけでも妬んでいるわけでもない。
かといって動物愛護的な立場で言っているわけでもないのだ。
 
じゃあどんなノリで言ってんだよおめーと、ああでもないこうでもないと考えながら、僕は真夜中に全長2kmにも及ぶ薄暗いトンネルのなかを歩いていた。
くそ重たいバイクを押しながら。
 
ガス欠
トンネルの真ん中にて。
 
『まだ大丈夫』といったような期待は、愛想をつかされかけてる恋人と、おしっこを溜める膀胱と、エロ本を読んでる最中に近づく母親の足音と、目を合わせてくれなくなった女性社員と、ガソリンメーターに対しては持つべきではない。
 
歩道なんて申し訳程度の、トンネル作って余ったコンクリをおまけで付け足したようなふざけた幅しかなく、決してそれはまともに歩けるようなものではない。
ので、僕は後続車のライトを背後に感じるたびに『あ、死ぬかもしれない』と断続的に思いながら、道路のできるだけ端の方を歩いていた。
『死ぬかもしれない』と思いながら4度くらい後続車をやり過ごした頃、死ぬかもしれないなどと、どこかこの世に未練を残すような言い方で本当に車に突っ込まれてぐちゃぐちゃになって死んじゃったらなんだかやりきれないよなと思い、
5度目からは『にゃん❤』とか言ってくそムカつくリアクションをとることにした。
 
そうして運よく死なずに数百m進んだところで、よっこらしょと休憩することに。
ウインカーを出して、バイクを端に寄せ、とても細い歩道の上に降り立った。
つま先立ちで。
 
しんと静まり返ったトンネルのなかは、やけに生ぬるい。
まいったねと、タバコに火をつける。つま先立ちで。
ふと考える。つま先立ちで。
うそ。普通に立てた。
 
これ、前に進むのと戻るの、どっちが賢い?
僕は、インディージョーンズ的な映画やモンタナがやってそうな、例のあれをやってみることにした。人差し指をぺろっと舐めて、風の吹く方向を確かめ、自信満々にその方向へと進む、なんとも冒険チックなあれだ。
 
僕の人差し指はなんだかしょっぱかった。
 
人生をトンネルに例える人はたくさんいるが、そのほとんどはリアルなトンネルのなかで途方に暮れたことなんてないだろう。
数十メートル間隔で置かれた❝非常電話❞のフタを開け、「事故、火災などの緊急を要する際の非常電話です」と書かれた注意書きを読んでは閉め、次の電話も読んでは閉め、こんなことで非常電話を使うべきではないと、汗だくで半泣きになりながら数百kgのバイクを押して歩いたことなんてないくせに。出口の見えないトンネルを歩く心細さ、知らないくせに。
どうせトンネル脱出できてもポッケに入ってる160円じゃどうすることもできないし、家までまだ20km以上あるし、ケータイも持ってねーしどーすんだよって気持ち、分からないくせに。
もっともらしく人生をトンネルに例えて格言っぽく言えるあんたは、そもそも人生に迷っちゃいない。大丈夫、うまくやれてる。
 
そんな具合で、なんとか死なずに脱出できた僕が、長いトンネルを歩み懊悩の果てに導き出したひとつの答え。
それは、ちょっとくらいなら人妻の誘惑に負けてもいいんじゃないかということだ。

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